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INTERVIEW お弁当を長く続けたいなら見た目よりも味で遊び、楽しもう! 東京・代々木上原で「chioben」を営み、毎日弁当を100個ほど作って出荷している山本千織さんには独特の弁当哲学があります。そんな彼女が考える、地味でも長く続けていくためのコツとは?

PROFILE

山本千織

料理人。北海道生まれ。美大を卒業後、さまざまな飲食店で料理を手がけ、妹が経営する札幌の『ごはんや はるや』に12年間かかわる。上京後、2011年に東京・代々木上原で弁当販売店「chioben(チオベン)」を開業。見た目と味の意外性、定番の春巻やたこめしの安定感で、一度食べたら忘れられないと評判に。現在は、撮影現場への弁当の仕出し、ケータリング、雑誌や広告へのレシピ掲載、イベント出店など幅広い場面で活躍している。著書に『チオベンの弁当本』(KADOKAWA)や『チオベン 見たことのない味チオベンのお弁当』(マガジンハウス)などがある。
https://www.instagram.com/chiobenfc/

マイルールをいくつか作れば、メニューに迷わなくなる

普段弁当を作るときに意識していることは?

私にとって弁当作りとは仕事なので、ご自身やご家族のために毎日弁当を作られている皆さんとは少し違うかもしれません。

でも、もちろん参考にしていただける部分もあると思います。

例えば、弁当作りのルールをいくつか自分のなかで決めていること。

私の場合、酢はおかずに使うと味に特徴が出るし、傷みにくいので好きなんですが、使うのは「肉と魚両方あるならどちらか1品だけ」というルールがあります。

他にも「肉と魚の片方は揚げ物、もう片方は揚げ物以外」、「必ず季節の食材を使う」など、ルールを決めておくことでメニューの選択肢が狭まるので、逆に迷わずに済みますよね。

「肉や魚がないから弁当ができない」と思う必要はない

長く続けるためのコツはありますか?

弁当作りに熱が入り始めると、弁当のための買い出しも楽じゃない。「あ、冷蔵庫に肉がないからお弁当作れない!スーパー行かなくちゃ」とか(笑)

でも、肉や魚がなくてもお弁当って作れます。だから「ときには肉魚なしの弁当もアリ」ってことにしちゃうといいんですよ。

冷蔵庫に肉も魚もない。そんなときには豆腐やサバ缶などの缶詰、かまぼこ、卵をうまく使えば、たんぱく質がとれて栄養的にもバランスよくなります。

まさに地味弁ですが、そんな日があってもいいのでは?

また、材料で言えばまいたけのような包丁のいらない食材は使いやすく調理も楽なので、常備しておくのがおすすめです。

さらに私の場合、お弁当作りでは炒め物はあまりしないんです。

一つひとつフライパンを振る作業が大変だし、弁当箱に入れたときにバラバラになりやすいのもあります。

炒める代わりに、食材をゆでてオイルであえることで、炒め物っぽく満足度のあるおかずができあがります。

自宅にあるスパイスでもっと地味弁は楽しくなる!

楽はしたいけど、マンネリ化して飽きてしまわないか心配です。

そんなときは、買ったものの余ってたスパイスやハーブをちょっと足してみると、思いがけない味になって楽しいです。特にごま油、ラー油、ハーブは少し入れると、なんとなく“それっぽい”味になるので、おすすめ。変化球の味つけをいろいろ試して、楽しんでみましょう。

また、自分で作るご飯はついつい似たような味になりがち。そこで、外食や他の人が作ったおいしかったご飯を作ってみると、マンネリ打破だけでなく、自分の引き出しを増やすことにもつながります。

地味でも弁当箱に詰めれば起こる“お弁当マジック”

地味弁を楽しく作り続けるために、どんなことが大切だと思いますか?

これは実際自分のお子さんに毎日弁当を作っている料理家さんから聞いた話なんですが、けっきょくは残さず食べてもらえることが、作る人にとってはいちばんのモチベーションになるんです。だから、その人は子どもの嫌いなものは弁当には入れないそう。

私の場合も、注文をいただくときに、どういう人が食べるのかとか、NGの食材はあるかなどは、わかっていたほうが作りやすいです。やっぱり食べる人の好みに合うものをお出しして、喜んでいただけるのがいちばんですよね。

ただ、“弁当マジック”ってあると思っていて。まかないに弁当に入れるものも含めいくつかのおかずを皿でだしても、私のアシスタントたちは他のものばかりを食べるんですが、そのおかずを弁当箱に詰めて持って帰って食べると「おいしかったです」って。

弁当箱に詰まっているだけで、たとえ見た目が地味なおかずであってもおいしく感じられる。そんなところも弁当の魅力だと思いますね。